お酒の「原産地呼称」を考える

 
   
長野県原産地呼称管理制度。漢字ばっかりのこの制度は、ざっくり言うと長野県産の農産物を使って、長野県でつくられた、味わいも個性のある農産物加工品などを認定する制度です。

わたしが新卒で出版社に入社した2003年、この制度ははじまりました。地方出版社に勤めはじめたものの、県外でしばらく暮らしていたので長野県のことが全然わかりません。編集長が先輩に、「ゲンサンチコショウカンリセイドの記者会見、今日だから行ってきて!」と言っているのを聞いて、コショウ?湖沼?と違う変換をして、たくさんのはてなマークを頭に浮かべていたのをよく覚えています。
  
あれから18年。脈々と続いてきたこの制度の、50回目となる日本酒の審査会が1月29日、松本で行われました。2、3年前から、(あんまりお役に立っていないですが)書類審査の委員をやっています。その関係で、今回の審査会のお披露目のお手伝いに行ってきました。
 
お披露目会では、認定酒のきき酒ができるだけではなく、飯米と酒米の玄米や精米したものの展示があったり、酒米の金紋錦とたかね錦を炊いたものの試食があったり。長野県が試験醸造した同スペックで酒米違い(山田錦/金紋錦/信交545<山恵錦>)のお酒のきき酒があったり。「原料」について考えていただける機会になっていたのかなと思います。
すてきだなあと思ったのは、大信州酒造さんがお披露目会に契約農家のみなさんとご一緒にいらしていたこと。まさに「原産地」。まさに「原産地呼称」。そういうこと。大信州さんは2種が審査員奨励賞に選ばれていました。今回の奨励賞は3種で、もうひとつは角口酒造店の北光正宗。これもうれしい。
  
本当は、山並みと、美しい川と、黄金の稲穂が見える場所でお披露目会ができたら「原産地」の意味がもっと実感できるんだけどなあ。18年経ったけれど県民ですらこの制度を知らない人もまだまだたくさんいるし、効率的・効果的に伝えられたらいいのにと思うものの、かといって、一過性のイベントは効果に比して心労が多い。個人的にウェブサイトに対する逡巡はあるものの、定期的に審査会を行い認定品が増えていくこの制度は、ウェブと相性がいいとも思う。でも今のサイトで「買いたい!」を引き出すうきうき感があるかどうか。
どこで伝えるか、どう伝えるか、どう伝え続けるか。これを考えることがわたしが委員になったミッションなんだと思いますが…。ふーっ。(緒)