かんがえかた

待ちこがれる信州の遅い春、湧き立つような土の匂いがその訪れを知らせてくれます。日に日に緑が濃さを増し太陽が照りつける夏、一転、夜の涼しいこと。その気候が、あまくておいしい農産物を育みます。山々が錦に彩られる秋の訪れは、風のそよぎと空の雲が知らせてくれます。食卓を彩るのは、すずなりの野菜や果物、山のきのこのおすそわけ。盛り付けられるのは近くの工芸作家がつくった器や、職人がつくるかごやざる。そして、再びやってくる長い冬に向けて軒先に柿や大根、凍み豆腐が連なる様は、家々が新しくなろうとも心に沁みる風景です。
ここにある風景は、人と自然が寄り添い暮らすことで生まれる風景です。たべものや、のみもの、器や暮らしの道具に至るまで、多くが信州でつくり出されるもので満たされます。こうした豊かさが日常的にあるという幸せの一方で、日常的であるからこそ、人はその大切さに気づきにくいものです。
この美しい風景、美しい暮らしがある信州を、ながく、ながく残したい。そのために、わたしたちは「伝える仕事」をしています。

できること

書籍や冊子、パンフレットなど、紙媒体の編集・執筆を中心に「伝える仕事」をしています。最近は、より効果的に伝えることを考えるなかで、イベントの企画やコーディネイト、計画策定、ホームページのディレクションなど、伝える仕事の形はさまざまに変化しています。そこに共通するのは「編集」という手段。
編集というと本のイメージが強いかもしれません。けれど、編集とは「すでにあることがらを、ひとつの切り口のもとに取捨選択し、関連づけ、調整しながら再配置して、新しい見せ方をすること」ではないかと思います。
信州のこと、暮らしのこと、文化のこと、生業のこと。さまざまなテーマに向き合い、編集という過程を経てものごとを整理し伝えることが、わたしたちのできることです。