6月の、松本


 
いつもだったら5月は松本の月ですが、今年は残念ながら工芸の五月も、六九クラフトストリートも中止。クラフトフェアは今のところ延期。松本市美術館も再開しない。ふーっと思っていたところに、美術館再開&松本広域以外からの来館も再開という知らせが届いたので早速、塚田さんとでかけてきました松本。
  
美術館で柚木さんの展示をみる。あれだけ取材を重ねてもしみられなかったら残念すぎると思っていたので、とてもうれしいことでした。フェイスシールドをしたスタッフの方が入り口で検温してくれて、名前と連絡先を書いた紙を提出して入館するというものものしさだけれど、開館できてよかった。
 
柚木沙弥郎さん。97歳という年齢、年月を重ねても色あせないこれまでの作品、年代が新しくなるほどにモダンさに磨きがかかる様。略歴をみれば、いまの私の年齢なんて半分よりまだ最初の方で、それから先の方がずっとずっと長く厚い。いまでも常に新しいことに取り組むその姿には、尊敬というか畏怖に近い感覚を覚えます。
念願の鳥獣戯画は、そのユーモラスさにくすりとするし、空を飛ぶつばめは愛らしい。ぜつぼうの濁点は、悲しみと楽しみが織り混ざる不思議な感覚に包まれます。

ぐるっと回ってミュージアムショップで鳥獣戯画のマスキングテープと書籍をお土産に。図録の付録には、「工芸の五月」特別編集号が付けられています。こちらもたくさんの方のご尽力で発行することができたもの。松本のみなさんの熱量に感服です。ぱらぱらとめくって柚木さんの言葉をたどると、またもや柚木さんに元気をもらったような気がします。柚木さんは、本当に恰好いい。わたしもこわっぱなりにかんばらないと思わせてくれる。
当初の予定から1ヵ月ほど延長して7月12日まで開催しています。
  
クラフトステーションにも立ち寄り近況報告をしあい、ランチはリニューアルオープンした金宇館へ。美ヶ原温泉にある温泉旅館。コロナの対応で臨時に日帰りランチを提供されていましたが、それも6月15日までということでいそいそと予約し向かった次第です。温泉に浸かってからのランチ。ちょっとした贅沢。ここしばらく休日出勤が続いたので代休ですよと心のなかで叫びながら。
 
稚鮎も牛蒡のソースを添えた牛肉も、すべてが美味しかったのですが、とにかく印象深かったのが八寸のなかのひと品、枝豆。実山椒を漬けた塩水に枝豆を浸したそうで、山椒の香りが鮮烈。豆を食べたあとも、皮をずっとはむはむしてしまうおいしさ。なんだこれ! 思わず日本酒を注文。長野県の銘酒がずらりと並ぶなかから、真澄の漆黒を。しあわせすぎる。
 
そして、建物や庭、しつらえがすばらしい。木造3階建ての旅館の各所に長野県の作家さんの器や家具が配されていて、季節の花がそこここに活けられている心地よい空間。今度はぜひ泊まりで出かけたい旅館です。
 
ほど近くにある、元同僚で工芸の五月誌の執筆・編集も一緒にやってきたあやのちゃんの自宅にも立ち寄って、生後6ヵ月の赤子に癒されたところでタイムアップ。あー出かけるって楽しいな。人に会うって楽しいな。(緒)