「柚木沙弥郎のいま」


 
去年の秋、染色工芸作家の柚木沙弥郎さんのインタビューをする機会をいただきました。松本で毎年5月に開催されている「工芸の五月」の公式ガイドブックのための取材です。
柚木さんは97歳にして、今なお新作に取り組みます。昨秋おじゃましたときはパリでの展示を終えて帰国した直後のこと。精力的な姿に、畏敬の念を抱くばかりの取材の時間でした。
 
なぜ今、柚木さんのインタビューだったかというと、柚木さんは旧制松本高等学校を卒業した縁、そして民藝運動が盛んな松本との縁もあり、今日、4月18日から6月7日まで、松本市美術館「柚木沙弥郎のいま」という展覧会が企画されているからです。
すべての作品は設置され、あとは開館するばかり…だそうですが、残念ながら美術館はこの時世で現在休館中。工芸の五月も中止、公式ガイドブックも、あとは印刷するだけというところでしたがストップ。こんなことがあるなんて。
 
インタビューでまとめた柚木さんの原稿のタイトルは「今に生きる」。柚木さんの生きる姿勢は、こんなときだからこそたくさんの人に触れてほしい言葉が詰まっていて、展示も今こそ観てほしい新作の《鳥獣戯画》があるのに。届けたいのに届けられないもどかしさで、感情がぐるぐるぐる。取材もご一緒した工芸の五月実行委員会の古藤さんともそんな話をしながらぐるぐるぐる。
そして昨日、再び古藤さんからお電話。公式ガイドブックもなんとかして紙にしたいけれど、ひとまず今の柚木さんの思いを改めて電話で取材して、届けようと。公式ガイドブックが発行できないこと、展覧会の目処が立たないこと、そして今の時世に対して、柚木さんのあふれる思いがあるという。
 
参考にと届いた今回の企画展の図録は、柚木さんの人柄や、作品の温かさを思わせるような、ぬらっとしたマットな手触りのカバー紙(なんていう紙だろう、気になる)。展覧会に寄せる柚木さんや担当学芸員の武藤さんの寄稿文を改めて刻んで、電話取材は月曜日。
やれることは限られているけれど、できることをコツコツと。(緒)