祖母の着物地で日傘

先日、取材でおじゃました善光寺門前の三河屋洋傘専門店。 (そのことを書いたブログはこちら→北澤さんの取材のこと) そのとき、北澤さんが「今なら3ヵ月くらいでつくれるよ」とおっしゃいました。かつて3年待ちといわれ、いまも県外から多くのお客さんが訪れる老舗洋傘屋さんです。これはチャンス!と反物を持って出かけました。北澤さんは、ほぐし織など、傘専用の高級生地を使った傘などをつくっていらっしゃいますが、持ち込んだ生地でも傘をつくってくださるのです。そういえばと思いいたったのが、母から「スカートにでもしたらどう?」ともらった、父方の亡き祖母の夏の着物地です。記憶が曖昧ですが、母がほどいた生地を、わたしがスカートにしようと縫い上げ途中で放置したようです。

 

北澤さんのところに持っていくと「足りるかなあ、ひとまずほぐして、アイロンかけてまた持っておいで」。生地からしたら、またほぐされるのかと思ったことでしょう。ゴールデンウィークにかまけて再び放置していましたが、取材原稿の校正を持っていくと「ほぐしたかい?15日までに持ってくれば、合間に早くできるよ」と北澤さん。そう言われてずくを出し、ようやくほぐして持っていったというわけです。北澤さんの見立てによると、なんとか1本の日傘がつくれそう。

 

さらに北澤さん、「お盆までに間に合うようにつくってあげる」と。はて、お盆?と聞き返すと、「お墓まいりに行くときにさしていって見せてあげたらいいじゃない」と。祖母の着物地ということは、ちらっと言ったか言わないかだったのに、そんな風に覚えていて、予定を立ててくださったことに感動。 北澤さんのところにはたくさんのお客さんが再訪し、ときには名刺をつくってくれたり、土地のおいしいものを届けてくれたりするそうです。良いものを届けるだけではなく、良い気持ちを添えてくれるから、気持ちの良いおつきあいが続くんだなとしみじみ。

 

早くに亡くなったので遺影でしか会ったことのない祖母ですが、夏にはそれを携えて帰省ということになりそうです。楽しみ。(緒)