狸と狐と満作

 
 
週末は長野から東京、つくばへの道行きでした。移動の時間は春を迎えた事務所の庭に心を寄せようと思いたち、何度目かの再読の『家守奇譚』と、初読の『冬虫夏草』を鞄へ(いずれも梨木香歩)。
  
しかし何度読んでも主人公の綿貫学士は、見事に狸に化かされているものである。そしておよそ狐かサルスベリか、どちらかの化身に助けられている。助かっているのだから、これ以上言及することもないのであろうけれども、それにしても度々である。狸氏は楽しんでいるのではあるだろうが、化かされる側としてはたまらない。
  
…という梨木調(綿貫調?)になってしまうくらい、梨木ワールドにどっぷり浸かった移動時間だったのですが…週を開けて事務所の表庭で目にしたのはその狸!!!!引っ越してほどない頃より縁側の下あたりからドコドコという音がすることはしばしばあったのですが、猫かなと。確かに猫は見かけていたのですが…ふと見上げた先にいたのは、まぎれもない狸。
 
シャッとカーテンを開ける
→裏庭に急ぐ狸
→裏の縁側に急ぐわたし
→裏庭の定位置で、もよおす狸。今!?
→写真を撮るわたし
→みつめ返す狸(写真はここ)
→窓を開けて威嚇
→表庭に急ぐ狸
→表庭の縁側に急ぐわたし
→気づかず縁側のすぐ近くを歩く狸
→近くに来すぎて怖くて音で威嚇するわたし
 
威嚇におののき去っていく狸の背中を見ながら、この威嚇活動の仕返し?に今後、化かされてしまう気がしてならない。最近フォックス先生(裏庭に住む狐)は姿を見せてくれないし、裏庭のサルスベリが咲くにはまだまだ、まだまだまだ早く…。母が「春一番に咲く花」と教えてくれた満開の満作が、なんとかしてくれないものか…。あー、動物が得意だったらよかったのに。でも気持ち的免疫はできたので、今度出会ってしまったら、もう少し鷹揚に対応したいと思います。(緒)