工芸青花と、建築家・高橋博

めずらしく東京に出張という機会を得て、塚田とふたり、プレゼンがおわったあと、神楽坂にある工芸青花へ。松本の六九クラフトストリートでお世話になっている森岡書店の森岡督行さんの監修による、青と白の衣の展示、「白と青」展の開催中でした。あまりに手触りの良いカシミアのニット、それをざぶざぶ洗濯機で洗って良いというお話に目からうろこ。
 
そして何より、建物が素晴らしかったです。神楽坂の路地裏に立つ一水寮という建物で、昭和20年代に大工の寮として建てられ、登録有形文化財に指定されているそうです。よくぞ大都会東京で残っていてくれたと思わずにいられない建物。とても感じがよくて、いとおしい気配。帰ってから気になって、少しだけ一水寮を調べてみたら、設計を担当した建築家の高橋博さんの義理の息子さんで、同じく建築家の鈴木喜一さんの文章にあたりました。
そのなかにあった高橋さんの言葉がなんとも建物をよく表しているというか。

「自分の建築は一代限りのもの」
「風が吹いたら揺れるような建築がいいんだよ」
 
高橋さんの言葉のように一代限りとはならず、大工寮からアパートになり、今はギャラリーなどとして使われ続けている一水寮ですが、風に揺れる気配というのは確かにはらんでいるように感じて、それは日本人ならではのはかなさに心を寄せる美しさのような感覚。でも高橋さんは大正から昭和にかけてイギリスで建築を学んだのだとか。
近くには事務所として建てた建物が、アユミギャラリーとして残っているそう。そっちも行けばよかったな。次の楽しみに。(緒)