変わりゆく松本


 
毎年5月に行われる「工芸の五月」。それにあわせて発行する「工芸の五月」誌という冊子があります。
そのなかの「建築家とめぐる城下町 誌面版みずのタイムトラベル」という連載を担当してもう5年。いつもこの時季になると、翌年の制作のために取材に入ります。松本城を軸に「城東」「城北」「城西」「城南」「城中」とやってきて、来年は「建築編」。松本城の北側を中心に、建築士の藤松幹雄さん(藤松建築設計室)、荒井洋さん(HAL設計室)のアテンドでまわりました。
 
やはり、専門家のアテンドでのまち歩きはとても楽しい。〝みずのタイムトラベル〟というだけあって江戸時代の地図と見比べながら「ほら! 江戸と変わらず、ここに水路が流れているのがわかりますよね!」、建築編だけあって「この隣り合う和洋折衷住宅、ほぼ建てた時期が同じなので、お互いデザイン的に牽制し合ったと思うんですよね〜」なんていうお話を聞きながら、てくてくてくと3時間ほど。
 
内容は来春の発行を楽しみにしていただくとして、写真は長野への帰路を急いだ帰り道に見た、松本の新しい風景。百貨店「井上」の旧店舗が解体され、駐車場になるための工事中の様子。閉店したまま残っていた旧井上は、壁面を縦横無尽に配管が這い、時とともに錆びついていてまるで要塞のようでした。一種異様だけど格好良かったその眺めは少し前になくなりましたが、すでに心象風景として焼きついている今、この新しい風景にしばし足が止まったのでした。