飯山の週末①「土の人、風の人」

1泊2日で長野市からほど近い飯山市へ。飯山市文化交流館なちゅら(隈研吾建築都市設計事務所)で開催された「第6回信越県境まちづくり交流会」に出席するためです。
 
今回のテーマは「スローフード」。大きな声では言えませんが、「スローフード」とくくり「活動」することに、漠然とした違和感を感じていました。けれど今回、イタリアのスローフードを取材されてきた島村奈津さんが講演会の冒頭「ファストフードへの反対運動ではなく、いかに食を楽しむか」とおっしゃってくださり、さらにイタリアの3つの地域のお話を聞いて、食だけではなく工芸や交通、エネルギー、コミュニティまでつながり、「これは単なる食の嗜好や指向の話ではなく、土地に根ざした暮らしの話だ」と思い至ったら、一気に猜疑心的もやもやは晴れて、言葉のイメージから勝手に決めつけてしまったことを反省。それにしても島村さんのお話の興味深いこと。ここまで土地に入って取材を重ね、意識をともにして伝えられることが、うらやましくてなりませんでした。
そしてパネルディスカッションでは、それぞれの土地に根を張り暮らす人たちの活動の紹介。なかでも活動として成熟しているのが、上越市の桑取谷という地域で活動されているNPO法人かみえちご山里ファン倶楽部でした。口伝の伝統技術の調査と記録、交流人口の増加に向けた300人規模の会員組織の運営活動、自立のための仕事の創造などなど、過疎の村でさまざまな仕組みを経済的に、理論的に組み立て実践されていることに感銘を受けました。「桑取谷が特別なわけではないんです。どこの村もそういう危機的な状況にあって、私たちはこの手法をかこおうとは思っていません。ひとつの村に住める人口も限られています。100人が定員になら、101人目は次の村に行ければいい。どこにでも当てはめられるやり方で、広がっていったら」と事務局長の松川菜々子さん。生産販売するお米もそれなりの価格ですが、「何を基準に高いと言うのか、決して高くはない」と。確かに天候の影響で野菜が値上がりするたびにニュースで「野菜高騰」と騒ぎ立て「生活逼迫」とまるで農家を攻め立てるような論調の異常さは日頃感じるところです。食料自給率が低いのは日本ではなく首都圏であることを前提に、「そんなに農家を追い詰めるのなら、兵糧攻めにしてあげたいくらいです(にっこり)」というユーモアも交えて、本音のお話がとても面白かったです。
 
東京都出身の松川さん。そのほかのパネラーのみなさんも、外からの移住者だったり土地の人だったりさまざまですが、共通していたのは確実に「土の人」であるということ。地域に根ざし、ものや場所をつくり育て、売り(交換し)、生計を立てる人たちと対照的に、風の人だと自覚せざるを得ない自分。風の人と言っても、玉井袈裟男先生が記されたような理想をのせてくるような人ではなく、どこかふわふわとして地に足のつかない人という意味で。そんな焦りから、講演会・パネルディスカッションの最中にも、いとぐちで商品つくって売ろうか! 自分でまずは売らないと、売っている人の気持ちはわからない! と考えてみたり。幸い、夕方からの交流会で信州いいやま観光局の大西さんから、わたしたちにできることは「伝えること、つなげることだよ」と言ってもらって少し安心し、かつ商品はつくらないでおこう思いとどまれましたが、土の人への憧れはおなかの奥の方でまだまだくすぶっています。風の役割が確かにあると思ってもなお。これを消化するのには、まだもう少しかかりそうです。(緒)